「あぁっ…ん、や…りゅーと、っ…」
気付いたら兼一は個室の壁に押さえつけられ、中心は龍斗を受け入れていた。ぐちゃぐちゃとナカを掻き回されてしまえば兼一には抗う術はない。
「気持ちいい?兼ちゃん…」
押さえ付けた龍斗は兼一を覗き込んだ。一応気を使っているのかその声は蜜やかなものだが、だからこそ龍斗の低音は情欲を刺激した。ひくり、と声にまで反応して兼一の絶頂が近づいた。
「ん、きもち…イっちゃ…」
龍斗はそんな兼一の痴態に唇端を吊り上げた。これでこそ目障りな奴らを出し抜いた価値があるというもの。自分だけに見せる兼一の乱れた姿はどうしようもなく魅力的だ。
最後の追い込み、とばかりに龍斗は腰を打ち付けるスピードを上げた。耐え切れず兼一が声を上げようとした、その時。
「兼一ィィィッ!!」
校舎の窓を割らんばかりの大声が響いた。この特徴ある声は、翔だ。
「どこだ兼一!返事しろ!!」
続いて郭の声。普段冷静というか人を喰った態度が目立つ彼にしては珍しい、張り上げた声。叫び声に続いてダダッと走り回る靴音もする。いなくなった兼一を探してるといった所か。
龍斗は舌打ちした。意外に見つかるのが早かった。兼一を見ると自分を探す二人に臆したのか顔面蒼白になっている。
「大丈夫。黙ってれば見付からないよ」
龍斗は安心させるように兼一の額へ口付けた。でも、と口を開いた兼一を人差し指で制し、暫く耳を澄ます。喧しく廊下を蹴る音に混じり、いたか、いやいない、などと話し声もする。しかしそれも徐々に遠ざかり、やがて再び沈黙が訪れた。
「ね、大丈夫だった」
龍斗の笑顔に兼一はほっと息をついた。だが安心する間もなく、キィという扉を開ける音が二人を戦慄させた。
「誰かいるのかい?」
この声は…
(緒方せんせ…?!)
(しっ!兼ちゃん黙って)
龍斗は兼一の口を塞いだ。心なしか焦った様子なのは気のせいか。
「ん?今私の目に入れても痛くない位可愛い生徒の声がしたようだけど」
コツコツ…足音は着々と近づいてくる。っていうか絶対この人気付いてる!二人は冷や汗を流した。
「さて、学校でおイタしている生徒にはー…」
足音が二人のいる個室の前で止まった。
「…お仕置きだよ」
ヒィィ!兼一は声にならない叫びを上げた。この人の場合それは冗談では済まない。変わった人が多過ぎるのだ、この学園は。
兼一は本当に何でこんな学校来ちゃったんだろう、と襲い来る恐怖に震えながら自分の進路選択を今更ながら深く深く後悔した。
【私立梁山泊学園奮闘記END】